投与速度 に注意が必要な注射剤は、投与速度を間違って投与してしまうと薬効が強く出過ぎたり、副作用が現れたり、逆に効果不足になったりするので、医師の指示に従いましょう。
目次
投与速度
投与速度に注意が必要な注射剤一覧(前半)
なるべくシリンジポンプや輸液ポンプを使用して正確な速度で投与することが必要となります。 静注用キシロカインやアンカロン注などの抗不整脈薬は、過量投与してしまうと心停止を引き起こします。 必ず心電図監視下で医師の指示通りの量を規定の速度以下で投与しましょう!! 塩化カリウム、アスパラギン酸カリウムなどの高濃度カリウム塩は、必ず輸液などで希釈し、かつ指定された速度以下で投与する必要があります。 投与速度が速すぎると、危険な高カリウム血症を引き起こし、最悪の場合は心停止になることもあるで注意しましょう。 注射剤によっては、カテコラミン、血管拡張薬、抗不整脈薬のように投与速度が薬効の強さを決定するものがあるんですよ!
薬効 | 主な商品名(一般名) | 投与速度 | 急速投与による 副作用 |
---|---|---|---|
カテコラミン製剤 | イノバン注・カコージンD注 (ドパミン塩酸塩) | 20μg/kg/分以下で点滴静注 | 不整脈 血圧上昇 |
ドブトレックス注射液(ドブタミン塩酸塩) | |||
ノルアドリナリン注(ノルアドレナリン) | 皮下注、点滴静注時は4μg/分以下で投与 | ||
強心薬 | コアテツク注(オルプリノン塩酸塩水和物) | 0.4μg/kg/分以下で点滴静注 | 不整脈 血圧低下 |
ハンプ注射用(カルペリチド[遺伝子組換え]) | 0.2μg/kg/分以下で持続静注(血行動態監視下) | ||
抗不整脈薬 | 静注用キシロカイン(リドカイン塩酸塩) | 2mg/kg/分以下で静注後、4mg/分以下で点滴静注(血圧・心電図監視下) | 血圧低下 不整脈 心停止 |
メキシチール点滴静注(メキシレチン塩酸塩) | 3mg/kg/5~10分間かけ徐々に静注後、0.6mg/kg/時以下で点滴静注(血圧・心電図監視下 | ||
注射用オノアクト(ランジオロール塩酸塩) | 0.06mg/kgを1分間で静注後、0.04mg/kg/分以下で持続静注(血圧・心電図監視下) | ||
アンカロン注(アミオダロン塩酸塩) | 125mg/10分間で静注後、49.5mg/時で6時間投与、25.5mg/時で42時間持続投与(血圧・心電図監視下) | ||
狭心症治療薬 | シグマー卜注(ニコランジル) | 6mg/時以下で点滴静注 | 血圧低下 |
血管拡張薬 | ミリスロール注(ニトログリセリン) | 0.1~0.2μg/kg/分ずつ増量し、2μg/kg/分以下で持続静注(血圧,血行動態監視下) | 血圧低下 不整脈 |
ニトロール注(硝酸イソソルビド) | 10mg/時以下で点滴静注(血圧・血行動態監視下) | ||
ペルジピン注射液(二カルジピン塩酸塩) | 2μg/kg/分以下で点滴静注(血圧・血行動態監視下) | 血圧低下 | |
ヘルベッサー注射用(ジルチアゼム塩酸塩) | 10mg/3分間で緩徐に静注(血圧・心電図監視下) | 徐脈、心停止 |
投与速度に注意が必要な注射剤一覧(後半)
セファメジンa注射用などのセフェム系抗生物質、ベントシリン注射用などのペニシリン系抗生物質、チエナム点滴静注用のカルバペネム系抗生物質は、30分以上(できれば60分以上)かけて点滴投与しましょう。 これらを急激に血管内に注入してしまうと、血管痛や血管炎のリスクが高まってしまいます。 また、これらの薬剤は副作用としてアレルギーがよく知られていますが、ゆっくりと投与するように心がけましょう。 そして、こまめに患者観察することで、アレルギーが起きたときの被害を最小限に抑えることができます。 カルバペネム系抗生物質では急速投与でけいれんや意識障害のリスクが高まります。 高カロリー輸液は、注入速度が速すぎると身体の代謝能を超え、身体に負荷をかけてしまうので注意しましょう。
薬効 | 主な商品名(一般名) | 投与速度 | 急速投与による 副作用 |
---|---|---|---|
高濃度カリウム塩製剤 | アスパラカリウム注(L-アスパラギン酸カリウム) | K+濃度として40mEq/L以下に必ず希釈し、20mEq/時以下で投与(総投与量100mEq/日) | 高カリウム血症 (筋緊張低下 心機能異常等) |
KCL注(塩化カリウム) | 高ナトリウム血症 うっ血性心不全 浮腫 | ||
高濃度ナトリウム塩製剤 | 食塩注10%(塩化ナトリウム) | 必ず希釈し、Na+濃度として100mEq/時以下で投与 | 高ナトリウム血症 うっ血性心不全 浮腫 |
ペニシリン系抗生物質 | ペントシリン注射用(ピペラシリンナトリウム) | 1時間以上かけて点滴静注、静注時は緩徐に投与 | 血管痛 静脈炎 |
ビクシリン注射用(アンピシリンナトリウム)など | |||
セフェム系抗生物質 | セフアメジンa注射用(セフアソリンナトリウム水和物) | 30分以上かけて点滴静注、静注時は緩徐に投与 | 血管痛 静脈炎 |
パンスポリン静注用(セフォチアム塩酸塩) | |||
ロセフィン静注用(セフトリアキソンナトリウム水和物) | |||
カルバペネム系抗生物質 | オメガシン点滴用(ビアペネム) | 30分以上かけて点滴静注 | 血管痛 静脈炎 けいれん 意識障害 |
カルベニン点滴用(八二ペネム・ベタミプロン) | |||
チエナム点滴静注用(イミペネム・シラスタチンナトリウム) | |||
フィニバツクス点滴静注用(ドリペネム水和物) | |||
メロペン点滴用(メロペネム) | |||
アミノグリコシド系抗生物質 | ゲンタシン注(ゲンタマイシン硫酸塩) | 30分以上かけて点滴静注 | 腎障害 |
トブラシン注(トブラマイシン) | |||
ハベカシン注射液(アルベカシン硫酸塩)など | |||
マクロライド系抗生物質 | エリスロシン点滴静注用(エリスロマイシン) | 2時間かけて点滴静注 | 血管痛 心室頻拍 |
ジスロマツク点滴静注用(アジスロマイシン) | |||
リンコマイシン系抗生物質 | グラシンS注射液(クリンダマイシンリン酸エステル) | 30分以上かけて点滴静注 | 心停止 |
リンコシン注射液(リンコマイシン塩酸塩水和物) | |||
グリコペプチド系抗生物質(抗MRSA薬) | 塩酸バンコマイシン点滴静注用(バンコマイシン塩酸塩) | 60分以上かけて点滴静注 | red neck (red man)症候群 血圧低下 |
注射用タゴシツド(テイコプラニン) | 30分以上かけて点滴静注 | ||
ニユーキノロン系抗菌薬 | クラビット点滴静注(レボフロキサシン水和物) | 1時間かけて点滴静注 | 血管痛 静脈炎 |
パシル点滴静注液(パズフロキサシンメシル酸塩) | |||
抗真菌薬 | アムビソーム点滴静注用(アムホテリシンBリボソーム) | 1時間かけて点滴静注 | 投与時関連反応 (発熱、悪寒 悪心、嘔吐 頭痛、背部痛等) |
ファンギソン注射用(アムホテリシンB) | 3時間以上かけて点滴静注 | ||
抗ウイルス薬 | ソビラックス点滴静注用(アシクロビル) | 1時間かけて点滴静注 | 血管痛 静脈炎 |
デノシン点滴静注用(ガンシクロビル) | |||
点滴静注用ホスカビル注(ホスカルネツトナトリウム水和物) | |||
蛋白分解酵素阻害薬 | 注射用エフオーワイ(ガペキサートメシル酸塩) | 2.5mg/kg/時以下で点滴静注 | 静脈炎・壊死 血圧低下 |
注射用プサン(ナフアモスタツトメシル酸塩) | 0,20mg/kg/時以下で点滴静注 | ||
非ステロイド性消炎・鎮痛薬 | ロピオン静注(フルルビプロフェンアキセチル) | できるだけゆっくり静注(1分間以上の時間をかけて) | 血圧上昇 (動物実験で) |
睡眠薬、抗不安薬 | サイレース静注・ロヒプノール静注用(フルニトラゼパム) | できるだけ緩徐に静注 | 静脈炎 呼吸抑制 血圧低下 |
セルシン注射液・ホリソン注射液(ジアゼパム) | |||
骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤) | アレテイア点滴静注(パミドロン酸ニナトリウム水和物)など | 4時間以上かけて点滴静注 | 皮膚刺激 尿細管障害による急性腎不全 |
高カロリー輸液 | エルネオパ輸液 | ブドウ糖として0.25~0.5g/kg/時以下【生体内のブドウ糖代謝能】 | 過度の高血糖 高浸透圧利尿 口渇 |
フルカリック輸液 | |||
ハイカリツク液など |
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参考元:エキスパートナース(2012年1月号)
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